IoTで実現する過不足のない快適な日常
簡単に言うとIoTでは、モノをインターネットとつなぐことで、“他ではないまさにその”モノから情報を集め、“他ではないまさにその”モノを通じて、それを使用する人に対してジャストフィットなサービスを提供できます。
あと一本あると思ったのに、冷蔵庫の冷えたビールがなくなっていた。せっかく風呂に入ってさっぱりしたのに、もう一度服を着て近くのコンビニまで行かなければならない。
たとえばこうした不快な経験を、そう遠くない将来、IoTは未然に察知して回避してくれます。
「飲んだだろ」「飲んでません」という夫婦間の不穏なやりとりも未然に回避できます。
では、どのようにそれが実現されるか、これからわかりやすく説明します。
そもそもIoTって何でしたっけ?
IoTとは、Internet of Thingsの略で、「モノのインターネット」と訳されます。
すべてのモノがインターネットにつながることで、それぞれのモノから個別の情報を取得でき、その情報を元に最適な方法でそのモノを制御できるという仕組みです。
プロセス的には、
- 情報の取得は、人の操作やセンサーを通じて行う。
- 集められた情報はクラウド上に蓄積、分析される。膨大なデータの解析にはAIが用いられる。
- 分析結果に応じてモノが作動。ヒトに対して最適なフィードバックがもたらされる。
ということです。
先ほどのビールのたとえで言うと下図のようになります。
IoTにはどんなモノが活用されるの?と聞かれたら、あらゆるモノが、と答えましょう。
スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末は言うに及ばず、家電やヘルスケア機器、乗り物など・・、2020年までには500億個のモノがインターネットに接続されると予測されています。まさにIoTからIoE=Internet of Everythingということになります。
いまいちまだピンと来ないという方向けに、次節でIoTの具体的な事例を紹介していきます。
IoTで実現するあんなことやこんなこと
スマートシティー/IoTと街
サッカーやサグラダファミリアで有名なバルセロナですが、実は官民連携して街のIoT化に取り組むスマートシティとしても有名です。
都市中にセンサーネットワークを設置して、行政業務の効率化を図ると同時に、「都市の暮らしやすさ」を徹底的に考えた街づくりを行っています。
たとえば、世界的にも有名なのが「スーパーブロック」です。
これは、複数の街区を一つの塊として捉え、内部への自動車の進入を制限することで、市民の安全や健康を守り、かつ車道を市民が活動する場として再利用する取り組みのこと。
この取り組みの中で、スーパーブロック内の歩行者数や排気ガスなどの量、車道の活用度合いや緑化率など、様々な指標で都市環境の状況を把握するためにIoTが活用されています。
他にも、ゴミ箱にセンサーを設置し、ゴミの回収を効率的に行うシステム、また公園のスプリンクラーと土壌の湿度センサーを連携させ、適切なタイミングで散水するシステムなど、都市をより良く保つために多くの取り組みが行われています。
このような取り組みを市民参加型で行っているのもポイントで、ウェブ上のプラットフォームを使い、市の予算の一部を住民が提案して投票できる仕組みを構築しているのも他にない特徴です。
このように、海外ではバルセロナ以外にもコペンハーゲンやニューヨークなど、様々な都市がスマートシティ化していますが、日本でも同様にスマートシティの取り組みは行われています。
その1つの例が、静岡県裾野市にトヨタ自動車が建設している「トヨタ ウーブン・シティ」。工場の跡地を利用し、2021年2月23日に着工されたばかりのスマートシティです。
このプロジェクトは、自動運転を始め、MaaS、パーソナルモビリティ、AI技術などを人々の生活環境に導入・検証できる、実証都市を作るのが目的。自動車だけでなく教育、農業、ヘルスケアなど、あらゆる分野のサービスのアイデアを募集しており、まさに未来の都市として誕生することが期待されています。
このような大規模なスマートシティ計画の他にも、例えばマンホールの中に水位センサーとアンテナを設置して下水道の水位を計り、事前に洪水を察知するようなシンプルなIoTサービスもあり、都市の安全や生活環境の改善を実現しています。
コネクティッド・カー/IoTと自動車
進歩が速いのはやはり自動車業界です。最新の技術は車内で感じるものなのでしょうか。
コネクティッドカー(connected=つながっている。もちろんインターネットに)と呼ばれ、たとえば、周辺の道路状況に応じて最適なルートを提示するナビゲーションシステムとか、AIによる自動運転化、それと掛け合わせた輸送配送の無人化なども、そろそろ実用段階に入ってくると言われています。
まず自動運転では、トヨタが「新しい未来の愛車」をコンセプトにした自動運転車「LQ」を公表しました。
限定領域内であれば全ての操作をAIが行える、自動運転レベル4相当の高度自動運転が搭載されており、他にも駐車場への自動駐車機能、ヘッドアップディスプレイの搭載など、最新の技術がふんだんに使われています。
そして一番の特徴は、人工知能システム「YUI」を搭載していることです。「YUI」は、運転者の様子を観察し、声や表情の変化から心理状態まで読み取り、気分に応じて最適な音楽をかけたり、話し相手になってくれたりします。居眠りしそうなドライバーに水・・はさすがにかけませんが、覚醒機能付きシートや空調、フレグランスなどで居眠り運転防止にも一役買ってくれます。
YUIは、休日のドライブ中に行き先の提案などもしてくれます。行った先でドライバーの心の高ぶりを感知し、そうした情報を集積して心を動かすスポットにますます精通し、フィードバッグがさらに正確になると言います。最適化の自動化、まさしくIoTの神髄と言えるのではないでしょうか。
続いて、輸送配送の無人化の分野では、ヤマト運輸がDNAと共同開発し、実証実験までを行った「ロボネコヤマト」が有名です。
これは、宅配における人材不足を解消するため、宅配の自動化を目標にしたサービスのこと。宅配BOXを搭載した自動運転車が、AIによって配達ルートを最適化し効率的な配達を実現するのが特徴です。
荷物の受け取り人は、外に出て荷物を取り出す手間は増えますが、その代わりに10分単位で配達時間を指定できるようになり、さらに依頼から最短40分で配達できるので、受け取りがより便利になることが期待されています。
このロボネコヤマトは2018年に神奈川県藤沢市で実証実験を行い、その後の活動は公表されていませんが、未来の配達サービスがイメージできる取り組みです。
以上で挙げた実例は、どちらも試験段階で、将来的に普及していく最先端の技術でしたが、より身近な例も数多くあります。
その一つが「スマートパーキング」です。Web上で空き駐車場を探し、オンラインで決済できるのが特徴で、ドライバーは駐車場探しをする必要がなくなります。
「akippa」が特に有名ですが、センサーを取り付けるだけで駐車場として登録できるので、これまで活用されていなかった土地が駐車場として使えるようになるメリットもあります。
関連記事:IoTの活用方法を解説!AIとの関係性とは?
IoTと医療
IoTは医療の分野でも活用され始めており、医療現場の深刻な人材不足を解決したり、人々の生命や健康を維持する効果が期待されています。
まず、医療用のベッドがIoT化した「スマートベッドシステム」では、寝ている患者の睡眠状態や呼吸数・心拍数といったバイタルサインを測定。患者の体にセンサーを取り付けることなく、ベッドサイドの端末やナースステーションから、患者の状態が一目でわかるようになります。
患者の変化にいち早く気づけるようになるため、医療現場の負担を減らしつつ、医療の質を高められるのがメリットです。
また、遠隔診療の分野では、5G通信を活用して鮮明な聴診音や画像を送ることにより、診療できる範囲が大幅に広がることが期待されています。
手術中に、遠隔地にいる熟練医がリアルタイムで助言を行うことはもちろん、遠隔操縦できる医療ロボットと組み合わせることで、遠隔手術ができる日がくるかもしれません。
このように、医療現場へのIoTの活用は多岐にわたりますが、日常生活でも健康維持に利用できるIoTサービスもあります。
例えば「Scanadu」は、体温、呼吸速度、血中酸素濃度、心拍数、血圧など、これまでは病院に行かなければ測れなかった体の状態を一瞬で測れる、画期的なIoTデバイスです。
測定方法は、手のひらサイズのIoTデバイスを額に当てるだけ。取得した健康データはBluetoothでスマホに送られ、アプリで管理できるので、データをもとに体調管理ができるようになります。
他にも、Apple Watchでは、着用者が転倒したことを検知し、その後1分間で何の動作もない場合に、正確な位置情報と共に緊急信号を送る機能を持っています。他にも心電図を測り、不整脈を検知する機能もあり、普段身に着けている時計が万が一の時の助けになる、といった事も期待されます。
IoTの活用事例12選!暮らしやビジネスまで分野別に紹介
「IoTとは」のまとめとして
デバイスを通じて1つ1つの事例や情報を集め、AIを駆使してデータを解析し、人やデバイスに対して最適なフィードバックを行う。他の誰でもない。その時その場所にいるあなただけのためのサービス。それが受けられるということででないでしょうか。
それにより、リソースを過不足なく配分し、仕事や生活をさらに快適にしてくれる。
トヨタのYUIのように、膨大なデータを得ることでAI自体が学習し、最適化、最大化をも自動化できてしまう。
PCなどの限られたデバイスのみでインターネットとつながっていた時代は急速に終わりを迎え、今後はあらゆるモノがインターネットを通して人工知能と結びつけられる。
本物の未来が、ついそこまで来ていると感じます。
参考:IoTに活用されるセンサの種類と用途のまとめ