IoTプラットフォームとは
しかし近年ではそういった「データ集め」だけが目的となっているようなIoT技術の導入は大きな効果が得られないことがわかってきています。
それよりも、集められたデータをどのように活用してサービス化していくか、価値提供につながるかを考えることが本質です。
そこで、収集した大量のデータを様々なアプリケーションや別のサービスと連携させることでサービス化していく、そのための基盤である「IoTプラットフォーム」が登場しました。
IoTプラットフォームは、提供するベンダーによってカバーしている範囲は様々です。
単純にデータを収集するだけのものもあれば、そこから派生してデータの加工、解析、可視化といった機能まで備えているものもあります。
今回は、そんなIoTプラットフォームについて解説をしていきます。
IoTプラットフォームの最新動向
各社カバー範囲や提供内容は様々ですが、大きく分けると自社サービスで囲い込みを行っているサービスと、他社との連携を積極的に行っているサービスがあります。
マイクロソフトやアマゾンなどの海外企業は連携を強化しているパターンが多く見られ、日本企業は囲い込みモデルが多く見られます。
IoTはその活用方法によって、データの集め方から加工方法、可視化にいたるまで様々なユースケースが想定されます。
まさに星の数ほどある活用方法を1つのプラットフォームで完結することは非常に難しく、どれだけ他社との連携、協力関係を強くできるかがIoTプラットフォームの生き残りの鍵となりそうです。
今後は、日本企業でもベンダー間の連携が求められていくでしょう。
IoTプラットフォームが持つ機能と役割
先述したとおり、提供するベンダー企業によって内容は異なりますが、大まかに以下の機能があることを押さえておいてください。
1.IoTデバイスの接続と管理
最も主要な機能としてIoTデバイスの接続及び管理が挙げられます。
各種APIやSDKを通じてIoTデバイスをクラウドに接続します。
IoTデバイスは独立した状態ではデータを連携させることはできないので、接続先としてIoTプラットフォームが必要になります。
また、IoTプラットフォームに接続されたデバイスは、その稼働状況や位置情報、その他備考情報などを一元管理することができます。
また、離れた場所から遠隔制御を行ったり、ファームウェアアップデートを行ったりする必要があると思います。
そういった遠隔制御もIoTプラットフォームの機能として備わっていることがあります。
2.データの収集
IoTプラットフォーム上には、データを収集するためのデータベースが存在します。
IoTデバイスから得られたデータを活用するためには、どこかに保存しておく必要があります。
この機能もIoTプラットフォームが担います。
また、デバイスからの情報だけでなく、他社が出しているデータも連動して収集できる機能を持っている場合があります。
例えば、農業分野において、温度や湿度、その日の天気予報などといった環境情報を収集してデータ活用を行いたい場合があります。
このとき、デバイスからは温度と湿度の情報は得ることができますが、その日の天気予報はデバイス側からは取得できません。
この場合、気象庁などが提供しているAPIなどから天気予報のデータを取得して日付をもとに紐付けていく必要があります。
IoTプラットフォームには、そういった機能も求められることがあるでしょう。
3.データの解析
集めたデータは解析まで行ってはじめて価値を生み出します。
いかにビックデータが集まったと言っても、それを適切に解析してこそ価値のあるサービスを提供することができます。
IoTプラットフォームに接続されるデバイスはときに数千〜数万にのぼることがあります。
それらのデータを適切に収集したのち、AIを用いて分析していく機能も求められるのです。
先程の農業分野の例を深堀りすると、あらゆる箇所に設置された温湿度センサーから取得されたデータとその時の天気予報のデータ1年分を解析することで、翌年の最適な肥料の種類やタイミング、台風や低温被害を注意するタイミングと対策方法などを出すことができれば、多くの農業従事者にとって価値ある情報として提供ができるはずです。
このように、データが適切に収集できることはもちろん大事ですが、その先の解析までを適切に行うことがIoTプラットフォームには求められています。
IoTプラットフォームの種類と選び方
IoTプラットフォームの種類
先述したとおり、IoTプラットフォームはベンダーによって内容や機能が異なります。
しかし、大きく分けると水平型と垂直型に分けることができます。
水平型は、すべての産業・業種で使えるように作られており、非常に汎用性が高いことが特徴です。
垂直型は特定の業種に絞って機能を提供していることが特徴で、機能の提供範囲から更に細かく分類がされています。
それぞれの特徴をおさえて、自分たちのビジネスに合ったプラットフォームを選ぶようにしましょう。
・水平型の特徴
水平型のプラットフォームでは、IoTシステムの構築に必要なデバイスの接続及び管理、データの収集、解析、可視化といった基本的なアプリケーションがセットになっています。
すべての産業で利用ができるように、汎用性を追求しています。
そのため、ユーザー自身がビジネスに合わせてカスタマイズすることがほとんどでしょう。
AWS IoTやAzureなどが代表的です。
・垂直型の特徴
垂直型のプラットフォームでは、水平型と違って特定の業種に絞って機能を提供しています。
垂直型の中でも、その業種に必要な機能をすべてカバーしたフルカバレッジ型、アプリのみを提供するアプリ提供型、サービスの目的や使用する機能を絞って提供する基本機能提供型に分けられます。
どの範囲を提供しているかによって異なりますが、機能を絞っているものほど低コストで導入できることが特徴です。
IoTプラットフォームを選ぶ際のポイント
IoTプラットフォームを選ぶ際には以下の5つのポイントがあります。
1.どのくらい安定して接続できるのか
IoTプラットフォームを選ぶ際に最も重要になるのが接続性です。
大量のデバイスを接続できることはもちろんですが、少ない接続数だとしても安定して稼働することができるかどうかはとても重要な指標になります。
どれほど優れたIoTデバイスを持っていたとしても、プラットフォーム側が安定した接続をできなければ、データを取りそこなってしまいます。
また、IoTデバイスは設置場所や設置状況、条件といった制約から通信方式が限定される場合があります。
幅広い通信規格に対応していることも、プラットフォームを選ぶ際には重要です。
2.セキュリティ対策を施しているか
IoTプラットフォームは、様々な情報を取得するために多くのセンサーやデバイスを接続する必要がある場合があります。
当然ながら、接続するデバイスが多ければ多いほどセキュリティ対策が難しくなります。
これらのリスクに対してどのような対策を施しているか、しっかりと確認するようにしましょう。
ときには企業秘密となり得るような情報や個人情報なども集まる事があると思います。
そういった情報を漏洩させると非常に大きな問題となってしまうため繊細な注意が必要です。
3.どの程度拡張が見込めるか
IoTプラットフォームを使って環境構築をしたあと、横展開のために接続するデバイスを増やしたり、取得するデータを増やしたりしたくなることがあると思います。
その際に、すぐに拡張できるものであれば問題ありませんが、接続台数を増やすと処理能力が低下したり、安易にデータを増やせないような仕様だと問題です。
仮に、複数の業種や産業にサービス提供を行うことを考えている場合、水平型のプラットフォームが適していると言えるでしょう。