しかし、業務委託契約についての知識を持っていないと、知らずのうちに法律を犯してしまう可能性があります。
今回の記事では、個人事業主が業務委託を受ける際の注意点や、メリット・デメリットを解説します。
個人事業主が業務委託を受ける際の注意点
偽装請負にならないようにする
偽装請負とは、実質的に労働者の派遣であるにもかかわらず、請負契約を偽装することです。
偽装請負をすると委託者・受託者ともに、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される可能性があります。
個人事業主が請負偽装となりやすいケースは、「一人請負型」です。
一人請負型とは、労働者を斡旋された企業が、その労働者と雇用契約ではなく、請負契約を結ぶことです。本来は、斡旋した企業が労働者と雇用契約を結ぶべきですが、業務委託契約のみで斡旋すると偽装請負となります。
契約の範囲を明確にする
個人事業主が業務委託契約を結ぶ場合は、どこまでの作業をするか明確にしておきましょう。
業務の範囲を明確にしておかないと、委託者との認識違いによりトラブルに発展する可能性があります。
事前に業務範囲を明確にしておけば、追加の作業を依頼されたときに、追加料金を請求できます。
対応できる量だけ仕事を受ける
大規模な依頼や複数の依頼がきた際に、対応できる業務量だけ仕事を受けないと、期日に間に合わずパンクする可能性があります。
納品が遅れるなどで委託先に迷惑を掛けると、損害賠償を請求されてしまいます。体調不良や事故など個人事業主が業務に従事できない状態であっても、損賠賠償請求をされる可能性があります。
損害賠償のリスクを避けるためにも、対応できる量だけ仕事を受けるようにしましょう。万が一の事態に備えて、個人事業主向けの賠償責任保険もあるので、不安な人は活用してください。
契約書を細かくチェックする
契約書は業務委託の内容が記載されていて、細かいチェックが必要です。
契約書の不備を発見できれば、後々のトラブルを避けられるとともに、自分の身も守れます。
契約書は最低限以下の項目をチェックしてください。
・請負契約になっているか
・業務内容が具体的にされているか
・報酬に間違いはないか
・契約期間や途中解約にかんする取り決めがあるか
・損害賠償請求が法外な金額になっていないか
・成果物の権利について
仕事を受ける個人事業主は、委託者よりも立場が弱くなりがちです。あらかじめ契約書をチェックすることにより、委託者からの理不尽な要求や対応を避けられます。
個人事業主の業務委託の種類
請負契約
請負契約とは、発注者が仕事を依頼して、請負者がその仕事を完成させて報酬をもらう契約です。請負契約では、「仕事を完成させる」ことがポイントとなります。
仕事が未完成だったり、品質が低かったりすると、報酬が支払われないことがあります。また、納品後に不具合やミスが発覚した場合、発注者は請負者に対して、ミスの修正を要求できます。
委任契約
委任契約は、「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」と民法で定められています。
委任契約の具体例は、以下のようなものが挙げられます。
・訴訟の代理人を弁護士に依頼する
・土地の名義変更を司法書士に依頼する
・相続税の申告を税理士に依頼する
業務委託は仕事の完成が目的ではなく、一定の事務処理行為を依頼するものです。瑕疵担保責任がないため、ミスが発生しても報酬に影響はありません。
ただし、請負者には「善管注意義務」があり、依頼された業務に対してミスがないように作業することが求められます。
個人事業主が業務委託を受けるメリット・デメリット
ここでは、個人事業主が業務委託を受けるメリットとデメリットを紹介します。
業務委託を受けるメリット
業務委託を活用すると、専門分野を活かせて、自分の好きな時間と場所で働けます。ここでは、業務委託を受けるメリットを解説します。
専門分野を活かせる
業務委託では何の仕事を受けるか自分で選べるため、専門分野を活かせます。
企業側が業務委託をするのは、自社にはない専門スキルを持った人材を求めているからです。これまでに蓄えた知識や経験を活用して業務委託を探せば、すぐに案件を見つけられるでしょう。
好きな時間と場所を選んで働ける
業務委託は期日までに仕事を完了させる必要がありますが、働く場所や時間などの細かな指示はありません。
情報漏洩に気をつける必要はありますが、カフェや図書館・コワーキングスペースなど、どこで仕事をするのも自由です。また、夜型の人は深夜に作業をしても問題ありません。
業務量を調整できる
業務委託では、仕事を受ける量を自分で決められます。
たくさん稼ぎたい人は多くの仕事を引き受けて、友人や家族と過ごす時間を増やしたい人は業務量を減らせます。
子どもの世話や家族の介護など、生活状況に合わせた仕事スタイルを選べるのも業務委託の魅力です。
業務委託を受けるデメリット
業務委託は案件を自分で探す必要があり、労働基準法の適用外となります。ここでは、業務委託を受けるデメリットを解説します。
労働基準法の適用外
業務委託は労働契約ではなく、労働基準法の適用外となります。
委託を受けた業務が終わらなくて、長時間の作業をしても残業代は発生しません。また、土日や深夜まで働いたとしても手当をもらえません。
体調を崩しても有給休暇はないため、働けなかった分は収入が減ります。業務委託は働き方の自由度が高いですが、何が起きても自己責任の側面が強いため注意が必要です。
自分で仕事を探す必要がある
会社から仕事をもらえる会社員と違い、個人事業主の業務委託は自分で仕事を探す必要があります。
専門知識やスキル・業界歴など、アピールポイントを持っていない人は、仕事を見つけられない可能性があります。
業務量を安定させるためには、普段の作業と並行して案件探しをすることが大切です。
まとめ
偽装請負とは、労働者の派遣であるにもかかわらず、請負契約を締結することです。発注者側だけでなく、仕事を受けた個人事業主側にも罰則があるため注意してください。
業務委託には、いくつかの注意点がありますが、自分の好きな時間や場所で働けたり、業務量を調整できたり、多くのメリットもあります。
自分の生活スタイルに合わせて、理想の働き方を実現してください。