転職によってキャリアアップすることが珍しくなくなった近年、退職代行という言葉を耳にする機会が増えてきましたが、実は10年以上前から弁護士が行う業務の一環として存在していました。
それにもかかわらず、退職代行がどのようなサポートをしてくれるのか、具体的に知らない人は少なくありません。
この記事では、退職代行の概要から利用するメリット・デメリットについて解説をしていきます。
また、利用をおすすめする人の特徴や、退職のポイントについても紹介していきますので、退職を検討している人はぜひ参考にしてみてください。
退職代行とは
「退職するだけなら自分で申し出ればいいのでは?」と疑問に感じるかもしれませんが、勤務先によっては「引き止められてしまい退職させてもらえない」「退職を申し出たら損害賠償を請求すると脅された」などの理由で、退職に踏み切れない人も少なからず存在するのです。
いわゆるブラック企業やパワハラ上司が相手だと退職できない場面が多々ありますが、退職代行という第三者を介すことでスムーズな退職手続きが可能となります。
退職代行を利用する3つのメリット
ここでは、退職代行を利用する3つのメリットについて解説していきます。
職場の人と顔を合わせずに退職できる
一般的に、退職する際には上司にその旨を申し出ることで話し合いが始まり、理由を説明して退職準備を進めていきます。
しかし「上司のパワハラがきつい」「会社の人との人間関係が悪い」などの理由で、職場の人と顔を合わせることも嫌だと感じてしまう人は多いものです。
また、面と向かっての話し合いになると、きちんと事情を説明することができないという人もいることでしょう。
退職代行を利用すれば、職場の人と顔を合わせず退職手続きを進められるので、心的負担が少なく済むことは大きなメリットであるといえるでしょう。
辞めれない状況から抜け出せる
ブラック企業や時代錯誤なパワハラ上司が相手だと、退職を申し出たことによって損害賠償を請求すると脅してきたり、何かと理由をつけて辞めさせてくれなかったりすることがあります。
また、就業規則や業務の引き継ぎを引き合いに出されることもあるでしょう。
実際、退職に関しては民法627条に定められている通り、退職の申し出から2週間で退職できるとしているので、就業規則で「1ヵ月以上前に申し出ること」とされていても2週間前であれば退職しても問題ありません。
引き継ぎに関しても、行わないことによって会社に実害を与えなければ問題なく「後任が育つまで待って」「人手不足だから」といった会社都合は認められないのです。
それでも聞く耳を持たない企業や上司を相手取らなければならない場合、個人では対応しきれないこともあるでしょう。
退職代行を利用すれば、外部の目ということもあり、こうした退職できない状況から抜け出すことができるのです。
アフターフォローもしてもらえる
退職代行のなかには、退職後のアフターフォローまで行ってくれるサービスもあります。
退職後、多くの人は次の企業で働き始めることになりますが、源泉徴収票をはじめ前職の企業から書類を送付してもらわなければなりません。
その際、円満退職をしていないと、前職に連絡を取るのが億劫に感じてしまうことはもちろん、嫌味や皮肉を言われストレスを感じてしまいます。
アフターフォローをしてくれる退職代行を利用すれば、こうした心的負担を感じることもないので、余計な不安や心配することもないでしょう。
退職代行を利用する3つのデメリット
ここでは、退職代行を利用するデメリットについて解説していきます。
費用がかかる
退職代行は無料サービスではなく、費用が発生します。
利用する業者によって費用は異なりますが、一般的に3万~5万円が相場であるといわれています。
自身で退職手続きを進められれば一切費用が発生することがないことを考えると、デメリットに感じる人も多いことでしょう。
転職する際、次の職場の給与が入るのは退職した翌々月であることが多く、それまで貯金で生活をすることになります。
また、転居が伴う転職であれば、引っ越し費用などもかかります。
このように、転職には何かとお金がかかるので、金銭的に余裕がない人は利用をためらってしまうことでしょう。
会社との関係や人間関係が壊れる可能性がある
退職代行を利用すると、職場の人にお世話になったことのお礼や挨拶をすることなく辞めることになるので、心象は良くありません。
そのため、退職後も元職場の人と良好な人間関係を保ちたいと考えている人にとっては、リスクがあるといえます。
また、同業他社へ転職する場合、同じ業界であることから仕事の都合で関わらなければならないこともあり得ます。
その際に、円満退職できていないと余計なトラブルが発生してしまうこともあるでしょう。
プライベートでも関係を保ちたい人に対しては個別で連絡することでフォローできますが、仕事関連は避けては通れないこともあるので、転職先選びは慎重に行うことをおすすめします。
代行業者との打ち合わせに手間がかかる
退職代行を利用して退職するには、次のような段取りで進めていきます。
・利用申し込み、料金支払い
・代行業者との打ち合わせ
・退職代行の実施
・アフターフォロー
このように退職代行を行ってくれる担当者との打ち合わせを行わなければならないので、手間と時間を要します。
少しでもスムーズに進める為には、退職希望の時期や理由について事前に整理、会社からの貸与品をまとめておくなど事前準備を行っておくと良いでしょう。
退職代行を利用した方がいい人の特徴
ブラック企業で辞めさせてもらえない人や、さまざまなハラスメントによって上司をはじめとする会社の人と顔を合わせるのが辛い人などが該当します。
また、退職を申し出ても一向に手続きを進めてくれない場合にも退職代行は役立ちます。
このように、職場環境に問題があり、退職することが困難な場合には退職代行の利用を検討してみると良いでしょう。
円満退職するためのポイント
ここでは、退職しようとしているすべての人に役立つ、円満退職するためのポイントを紹介していきます。
就業規則を確認する
まずは所属企業の就業規則にて、退職に関する条項を確認しましょう。
こちらの確認を行わずに退職を申し出ると「就業規則を読んでいないのか」と波風が立ってしまう原因になりかねません。
特に「1ヵ月以上前に申し出る」のような期間や、業務の引き継ぎに関する内容は引き合いに出されることも多いので要チェックです。
規則を遵守した期間で退職を申し出て、業務の引き継ぎ計画も明確にしておくと、無用なトラブルを回避することができるでしょう。
繁忙期に退職を申し出ないようにする
「職場環境が辛いから今すぐ辞めたい」「次の職場が決まったから入社時期に合わせて辞めたい」など、退職するタイミングは人ぞれぞれですが、こちらを見誤ると円満退職できない可能性があります。
たとえば、人手不足の職場にもかかわらず、繁忙期に退職を申し出たらどうなるでしょうか。
企業側からしてみれば「繁忙期が過ぎるまで残って欲しい」「後任が業務できるまできちんと引き継ぎをして欲しい」と言うのは当然のことです。
また、忙しさを理由に退職に関する話し合いや手続きを後回しにされてしまう可能性もあります。
自己都合ばかりを優先しているとトラブルの原因になるので、円満退職したい人は退職するタイミングに気を配るようにしましょう。
まとめ
基本的に、退職に関しては民法でも定められている通り、会社側に引き留める強制力はありませんが、職場環境や上司によっては退職の申し出がしにくかったり、無理矢理引き止められてしまったりして、自力で辞めることが困難である場合があります。
そのような状況に陥ってしまったら、ぜひ本記事を思い出し、退職代行の利用を検討してみてください。