One to Oneマーケティングとは
顧客を「集団(マス)」ではなく「個」として考え、顧客中心のマーケティング戦略を立てるべきだという考えです。
例えば、近所の八百屋に足を運ぶ時のことを想像してみてください。あなたはその八百屋の常連。八百屋の店主はあなたの好みを知り尽くしているので、「今日はいいカボチャが入ったよ」「お客さんの好きなみかんをおまけするから、これからも贔屓にしてね」など、あなたの嗜好や性格に合わせて接客をしてくれます。
このように、客一人ひとりの特徴に合わせて接客方法を変える八百屋の商売は、原初的なOne to Oneマーケティングといえるのです。
しかし、八百屋ではうまくいっていた手法をそのまま大きな規模で行おうとすると、当然思うようにはいきません。
インターネット技術が発展する以前は、数え切れないほど多い顧客一人ひとりの嗜好を理解するなど到底不可能でした。
そこで、テレビ・新聞・ラジオなどのマスメディアを利用して、大衆に同じ内容を発信するという手法が有効とされてきたのです。
しかしインターネットが発達すると、顧客は製品情報の調査や購入にデジタルデバイスを用いることが当たり前になりました。
顧客の購買履歴などを解析すれば、その人の行動や嗜好をデータで把握することができます。そしてそのデータを元に顧客ごとに接客内容を変えれば、すべての人に同じ接客をするよりも着実に購入へと導くことができるのです。
こうしてOne to Oneマーケティングは、IT技術の発展に伴って主流となっていきました。
One to Oneマーケティングの手法
ここでは代表的なものを3つご紹介します。
マーケティングオートメーション(MA)
その名の通り、マーケティングを自動化する技術のことです。
MAツールを駆使すれば、見込み客の属性や行動のデータを元に、適切なタイミングやチャネルで適切なメッセージを送ることができます。
具体例としては、紳士服のセールの際に男性のみにメールを送る、ECサイトでカートに製品を放置している客に「買い忘れはありませんか?」とメールを送る(カート放棄シナリオ)などがあります。
MAの重要な役割として、以下の4つが挙げられます。
①リードジェネレーション(見込み客の発見)
見込み客にアプローチするためには、当然メールアドレスや電話番号などの情報が必要です。
元々社内にあった顧客の情報(名刺や社内システム)の活用に加え、セミナーやメルマガへの申込を促して新規見込み客を獲得することで、配信を行う対象をリストアップしましょう。
②リードナーチャリング(見込み客の育成)
まだ購買意欲の低い見込み客(潜在顧客)を、MAによるアクションで育成してコンバージョンへと導く工程です。
まず「どんな状態の見込み客に」「どんな手段を用いて」「どんな内容のコンテンツを送るか」といったシナリオを設計してから、そのシナリオをMAツールで実装しましょう。
③リードクオリフィケーション(見込み客のスコアづけ)
見込み客を、コンバージョンへの近さなどでスコアづけする工程で、「リードスコアリング」とも呼びます。
「点数の低い客には不安解消を促す」「点数の高い客には申込方法を提示する」といったように、スコア別にメッセージを出し分けることで、見込み客一人ひとりの状態にあった接客が実現できます。
④リードマネジメント(管理と分析)
①〜③で実施した施策の効果を計測し、分析を行う機能です。
チャネルごとの閲覧数や最終的なコンバージョン数などの指標を元にPDCAサイクルを回し、課題の発見と施策の効率化を目指しましょう。
また実績を数値化することで、事業計画の達成率を数値として示すこともできます。
MAでは取れる情報がとても多いため、すべてを考慮していては本当に大切な課題を見逃してしまうかもしれません。課題の優先順位を明確にし、重要な課題のみに注目して解析することも重要です。
リターゲティング広告
ユーザーがWebブラウザを通してサイトを訪問した際に保存されるCookieの情報を元に、提携ウェブサイトの広告枠に広告を表示する技術です。
通販サイトでチェックした製品の広告が他のサイトに表示されていた、という経験があるかと思います。
通常のディスプレイ広告に比べ、コンバージョン率・クリック率が高くなる傾向があるため、費用対効果が期待できます。
Cookie情報と自社がもつ顧客データを組み合わせることで、さらに絞り込んだ広告配信も可能です。
ちなみにYahoo!プロモーション広告では「リターゲティング」と呼ばれる一方、Google広告では「リマーケティング」と呼称されます。
レコメンデーション
顧客や製品の情報を元に、その顧客に適していると思われる情報を提示するサービスです。
通販サイトにおける「この製品を買った方は、こんな製品も購入しています」といった情報がレコメンデーションにあたります。
レコメンデーションの手法は大きく2つに分かれます。
①ユーザーベース
顧客の性別や年齢といった属性や、購買履歴などの行動からおすすめする製品を出し分ける方法です。
より詳しく解説すると、そのユーザーと類似したユーザーをアルゴリズムにより選定し、類似したユーザーが好む製品をレコメンドします。
例:「Aさんが掃除機を買っているのだから、Aさんに似ているユーザーのBさんも掃除機を欲しいに違いない!」
②アイテムベース
同じくユーザーの購買行動などを元に製品同士の類似度を計測し、関連のあるアイテムをユーザーにレコメンドする方法です。
例:「Aさんがまな板を購入しているのだから、まな板と関連のある包丁も欲しいに違いない!」
One to Oneマーケティングの成功事例
サンリオ
ハローキティなどでおなじみのサンリオも、MAの導入によってOne to Oneマーケティングを実現した企業の一つ。
サンリオが導入した「Salesforce Marketing Cloud」はMAツールの中でも特に有名なもので、数々の大企業が導入しはじめています。
サンリオはまずMarketing Cloudを用いて、コーポレートサイト、ECサイト、サンリオピューロランドサイトに点在していたユーザーの情報を統合しました。
そして一元管理されたデータを元に行ったのが、ショッピング履歴やコーポレートサイトの閲覧履歴からユーザーの好きなキャラクターを特定する仕組みづくり。
その結果、ユーザー一人ひとりの好きなキャラクターが登場するメッセージを配信できるようになり、ファンの心を掴むことに成功したのです。
参考:クラウド型顧客管理導入事例 - サンリオ | セールスフォース・ドットコム
Netflix
全世界で人気を博する動画配信サービスのNetflixは、レコメンデーションシステムに力を入れていることで有名。
特徴的なのは、性別や年齢といったユーザーの属性を一切考慮せず「ユーザーがどのコンテンツを、いつどのデバイスで見たのか」といったユーザーの行動を用いてパーソナライズしている点です。
Netflixトップページには、ユーザーにオススメの作品がオススメの順に並びます。さらに同じ作品でも、ユーザーの好みによってアートワークがパーソナライズされているのです(例えば恋愛映画が好きな人には男女が寄り添う写真、特定の俳優が好きな人にはその俳優の映っている写真)。
至るところにレコメンデーション機能が散りばめられているので、Netflixを視聴する際はぜひ注目してみてください。
参考:Netflixのレコメンド機能のご利用方法
まとめ
今後さらに通信技術や機械学習の技術が発展していけば、より高度なパーソナライズが可能になっていくはずです。
最先端の技術にキャッチアップし続け、進化するOne to Oneマーケティングをうまく活用していきましょう。