ブランドストーリーで心を揺さぶる 10年後に生き残るブランディングの最強手法

ブランディング

INDEX

ブランディングとは、共感を呼ぶストーリーの構築です。商品が他のものより優れていると一方的に宣伝しても、それだけではブランド化できません。

例えば豚の場合、「このマークの豚は柔らかい」という認識があり、「〇〇牧場で放し飼いされたから、甘くて美味しいん」と口コミされ、売り手も「お客様が喜ぶなら、品質を維持しよう」と努力します。

マークが体験や意味を連想させるようになると、商品は「ブランド」として認識されます。要するに、ブランドとは意味であり、人々の心に呼び起こされる個性です。

無形でありながら、独自の役割を果たし、感情移入できる対象です。商品の独自性や世界観など、共感を呼ぶブランドストーリーが広く認められると、その商品はより強力なブランドへと成長します。このストーリーテリングを計画的に行うことが「ブランディング」なのです。

ブランディングには「効くストーリー」が重要!

ブランディングにおいては魅力的なストーリーが不可欠です。「ストーリー戦略」という言葉を聞いたことはないでしょうか。

自社や商品についてのストーリーを語る。その文字数が多いからといって、それだけがストーリー戦略ではありません。ブランディングにおいて本当に必要なのは、「効果的なストーリー」です。つまり、そのストーリーに触れた人々が、その商品を特別な存在と感じたり、価格が妥当だと思える状態にすることです。

詳しい事例は後で紹介しますが、ここでは金沢の「ゴーゴーカレー」という食品ブランドを例に挙げましょう。「55の工程を5時間かけてじっくり煮込んだオリジナルルーを55時間寝かし、旨みを熟成!」…。そう聞くと、実際どんなもんなんだろう、と思えてきて、食べてみたくなりませんか? このように、ストーリー戦略は読者の五感や想像力を刺激し、共感を呼び覚ます手法なのです。

ストーリーがブランドにもたらす4つのメリット

現代はモノ余りで、個々の商品(サービス)の機能の差はわずかとなり、ブランドの差別化が難しい時代です。ネットショッピングで直ぐに欲しいものが入手できることも、一つのブランドに執着しない理由の一つでしょう。ただし、SNSの発達により、ストーリー性を持った商品(サービス)への共感があると、<共有><いいね><リツィート>といった形で瞬く間に拡散することも確かです。

ストーリー戦略がブランドにもたらすメリットとしては、主に以下の4点があります。

1. メッセージが伝わりやすい


ストーリーは顧客の情緒面に直に働きかけるため、メッセージが伝わりやすい傾向にあります。<へぇ>という驚きをともなうストーリーは、商品特徴を羅列するよりも、記憶に残りやすいのです。

2. 右脳派の共感を得やすい


スペックを見比べて論理的に納得した上で購買候補を絞りこむ左脳派人間に対し、右脳派はストーリーが感性に刺さると共感します。何となく素敵、デザインが好みという判断基準からブランドに共感を持つと、違いがないものに対して差別化が生まれ、認知レベルが上がります。

3. 顧客がファン化しやすい


ストーリーに感情移入する顧客層は、理屈で商品の機能性に惹かれるというより、ブランドそのものに惹かれる傾向があり、ファン化しやすい傾向があります。このファン化こそ、長期的スパンで企業のLTV(生涯顧客価値)を向上させる重要な要素になります。

4. 価格競争から抜け出せる


特徴や機能に大差がない商品を打ち出す複数の企業間では、販売の際に価格競争が起きがちです。ストーリーによって自社のブランド価値を高め、替えのきかない唯一無二のブランドと認識されれば、価格が多少高くても顧客から選ばれる存在になれます。

ら選ばれる存在になれます。

ブランドストーリーの成功例

「RedBull」(レッドブル)


『翼を授ける』

レッドブルのテレビCMでは、試練に遭った人物や動物がレッドブルを飲むと、超人的なパワーを発揮し困難を乗り越えるという定番のストーリーが展開されます。製品の有効成分や他社との比較よりも、挑戦に「翼を授ける」というユーモラスなストーリーが中心です。日本サイトでは、興味深いコンテンツが満載で、レッドブルは顧客の購買意欲を一貫したストーリーでつなぎ、エナジードリンク市場でNo.1の座を維持しています。

公式ページ:https://www.redbull.com/jp-ja/

「気仙沼ニッティング」


『人の手が編んだものを着るのって、どうしてうれしいんだろう』

2012年に震災支援プロジェクトとして始まり、2013年に株式化し、今や全国展開をする「気仙沼ニッティング」は、地元の女性達が手編みしたセーターを販売する会社です。納品までに何か月もかかり、シンプルなセーターで11万円、カスタマイズものでは15万円もするのに、被災後時間が経った今でも売れ行きは上々です。何故売れるのか、の答えは、ブランドの思いや手作り品質のエビデンスをストーリーで紹介しているからです。例えば、ミソという名の双子の羊を育てる話、など。地元ならではの話題がトツトツと、愛着を生み出す物語仕立てで語られています。

公式ページ:https://www.knitting.co.jp/

HITO病院(ひとびょういん)


『人が真ん中になると医療は変わる』

愛媛県にある石川病院は、地域医療再生計画により、救急病院から大規模中核病院へ変更が決まりました。病床を増床、緩和ケア病棟も新設されるにあたり、院長の理念;<患者を家族と思う><病院らしくない美術館のような場所にしたい>を活かし、人を中心としたストーリーを軸に<HITO病院>を設立します。

病院名を始め、うつむかずに天井を見上げるような空間デザイン、全医師がI-PADを活用する効率的行動規範に至るまで、病院全体をブランディング。新病院では7割以上の入院患者が<医療関係者の対応が素晴らしい><居心地が良い>と答えるなどポジティブな変化が。病と向き合うだけでなく、どう生きるかに向き合う、という人間的ストーリーによって、人の集う病院として確固たるブランドを築いています。

公式ページ:http://hitomedical.co-site.jp/

DOVE(ダブ)


『大好きなわたし~Free Being Me~』

ダブはユニリーバが保有するパーソナル・ケア製品のブランドで、日本を含む世界80カ国で販売されています。ダブのブランド理念は<本当の美しさを閉じ込めないこと>。調査から、10代で自分の容姿に自信がある人が7%しかいない現実を知り、自己肯定感を高めるムービーを製作しました。女子学生たちがスケッチに描かれる顔を通して、クラスメイトの目に映る自身の姿を確認し、ありのままの美しさに気づいていく物語です。動画では実際の顧客が主人公となって体験をするので、大変感情移入させられます。商品のことを一言も語らず、ブランド理念だけを伝えるこのストーリーは大きな共感を呼び、世界中でダブのファンが増えた、と言われています。

公式ページ:https://youtu.be/litXW91UauE

感情に訴えるブランドストーリーのセオリーは二つ

ブランドストーリーが人の感情に効果的に届くためのセオリーには、大きく2つあります。

1. 人と人との関係に着目しよう


一般的に、顧客は人と人との関係の変化を見ることで感情を動かす傾向があります。ブランドや商品の機能や便益が人間関係に良い変化をもたらす時、感情が喚起されます。私たちが消費するモノやサービスは、仮に無人島で一人暮らしするとしたら不要なものばかりでしょう。家族や同僚、学校や趣味の集まりなど、私たちは他者やコミュニティの存在を意識してモノを買い、サービスを消費します。例えば、歯磨き粉の場合、機能は歯を白くし、口臭を防ぐことで、便益は口臭を気にせずに至近距離で話せること。変化する人間関係は家族、友人、恋人と親密になれることです。感情に訴える心理的手法として、人間関係を描くことは効果があります。

2. Whatよりも“Why”と“How”が大事


ストーリーでは、What=何をつくったかは重要ではありません。“Why”=何故それを作ったか、“How”=どのようにつくったかが注目されます。

例えば、アメリカ人女性が企画したキャリーケースAWAYは、スマホを充電できるモバイルバッテリー内臓のキャリーケースとして大ヒットしました。スマホ充電切れの際も荷物からバッテリーを探さなくて済むという便益を提供しています。

“何故”つくったかは、旅好きの創始者たちが理想とするキャリーケースが無かったからです。当時のケースは旅費よりも高価なものか、すぐに壊れる安物に二極化していたため、中間価格帯で便利なものがあれば、という思いに賛同が集まりました。

“どうやって”は、約1000人の聞き取り調査を通じて、顧客のニーズを丁寧に拾ったそうです。現在でもAWAYのサイトでは商品の告知より、世界各所の風景写真やAWAYと共に旅行する人たちの笑顔の写真に溢れ、<旅の楽しさを追求する>というブランドストーリーが濃厚に伝わってきます。

公式サイト:https://www.awaytravel.com/our-story

3ステップでブランドストーリーをつくろう

Step1 主人公を決めよう


ブランドの象徴的顧客像<ペルソナ>とは別に、ストーリーに登場する主人公をどのようにするか考えます。主人公のタイプは3通りあります。

創業者・経営者・従業員


仕事への熱意がテーマ。例えば、TV番組の<プロジェクトX><プロフェッショナル>のように熱心に仕事に取り組む人にスポットライトを当て、その思いを深堀りすると、視聴者は胸を打たれます。

商品・サービス


商品・サービスへのこだわりや意味がテーマ。例えば、<今治タオル>は、タオルが“安くて低品質の日用品”から“幸福な時間をもたらす存在”へ変貌したストーリーに共感します。

顧客


顧客の味わう感動がテーマ。デジタル旅行プラットフォーム「アゴダ」の例では、爆安でリッチな旅体験をするストーリーを通じてサービスの価値を伝えています。

Step2 複数パターン作ってみよう


ブランドのミッション(存在意義)や思いは一貫した、ブレないものでなくてはなりません。が、ストーリーについては異なるアングルから何パターンか作成してみると良いでしょう。顧客に響くパターンが見つかるはずです。

Step3 伝え続けよう


ストーリーを浸透させる上で大切なことは、<絶えず発信し続けること>です。自社サイトはもちろん、SNS、印刷物、タグ、POPなどマルチチャネルからの発信が効果的です。多様な顧客とのタッチポイントを増やすことで、新規顧客の増加が期待できます。

上手なブランドストーリーはここを外さない

ブランドストーリーを構築する際に留意すべき3つのポイントがあります。

①トリビア性、ロマン性はあるか


ブランドストーリーは、人にインパクトや感心、関心、気づき、ワクワク感を与える必要があります。発信前に、チーム内でそのストーリーが人に「へぇ」と感じさせ、「誰かに伝えたい」と思わせるかどうかを検証しましょう。欠かせないのは、そのストーリーにトリビア的な要素が含まれているかどうかです。また、感動を呼ぶ要素として重要なのが、ロマン性です。例えば、米国の鞄メーカー<ゼロハリバートン>は、アポロが月の石を自社製のアタッシェケースに入れて持ち帰ったエピソードをストーリーに活用しています。概して、歴史・旅・宇宙の要素がストーリーに組み込まれると、ロマン性が加味され、心の琴線を刺激すると言われています。

公式ページ:https://zerohalliburton.jp/pages/about

概して歴史・旅・宇宙の要素がストーリーに入るとロマン性が加味され、心の琴線を刺激すると言われています。

②直感的に、でもエモーショナルに


ストーリーは、ブランドの魅力を直感的に伝えるシンプルなメッセージが好まれます。ただし、シンプルさにこだわりすぎると、平凡で面白みのないストーリーになりがちなので注意が必要です。オリジナリティを備えつつ、人の心を揺さぶる物語を設計することが重要です。

③誇張はOK、嘘はダメ


理想の姿を強調してストーリーを語る際、適度な<誇張>は許容されます。ただし、ストーリーに少しでも<嘘>が含まれると、人々は興ざめし、ブランドのイメージが一気に損なわれてしまいます。

まとめ

「ストーリー戦略」とは、ストーリーをコンテンツとして発信し、顧客の感情に訴えることで、ブランドに独自性や付加価値をもたらすブランディングの手法です。ブランド創設の理念やプロセス、熱い思いが魅力的なストーリーに包まれることで、顧客の心に響き、共感を呼び起こします。これにより、ファンを育成し、企業の顧客生涯価値(LTV)にも良い影響を与える好循環が生まれます。モノの差別化が難しい現代こそ、心を揺さぶるストーリーを通じてブランドを底上げし、10年後にも輝き続けるブランドを目指しませんか。
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