DX推進を担当する部門が設置されたり、専任の担当者が設けられたりと、徐々に企業において準備が始まってきた状況ですが、正直どのように推進していけばいいかわからないという方もいらっしゃると思います。
そこでこの記事では国内のDX成功事例を3つご紹介します。
それぞれ取り組みの経緯や具体的な内容、成果までを分かりやすく解説していきますので、DX推進部門の方や担当者の方は是非最後までお読みください。
DXの定義をおさらい
■DXとは
DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称です。
元々はスウェーデンのウメオ大学で教授を務めていたエリック・ストルターマンが、2004年に提唱した概念とされており、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という意味を持った言葉として使われていました。
その後、ビジネス領域でDXが注目されるに従って、経済産業省が以下の定義を発表しています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
要するにDXとは、「デジタル技術を活用し、ビジネス全体を効率化させて、製品やサービスの品質も高めていくことを目的とした取り組み」というわけです。
ここからはDXの取り組みの事例として、3社ご紹介します。
それぞれどういった経緯があってDXに取り組むに至ったのか、DX推進の結果どういった成果が現れたのか、詳しく見ていきましょう。
DXの成功事例①:メルカリ
■DXに取り組んだ背景
メルカリが台頭してくるまでCtoCビジネス、いわゆる個人間売買はヤフオク!などのネットオークションサービスが中心でした。
オークションは入札価格が上乗せされていく仕組みを取っているため、「それなりの価値のあるものでなければ正直出品しづらい…」といった、心理的なハードルを感じやすい側面がありました。
またPCでの利用を前提としていることもあり、手軽さに欠けていました。
上記に挙げた
・利用の心理的ハードルがある
・PC利用前提のため、手軽さに欠ける
といったCtoCビジネスにおける課題を、デジタル技術の活用によって改善しようとしたのがメルカリです。
■DXの具体的な取り組み内容
まず心理的ハードルを軽減するために、メルカリはオークション型ではなく、フリーマーケット型の仕組みを採用しました。
フリーマーケット型は売り手が価格を設定し、買い手からの交渉次第で値下げに応じることもできるため、「自分がいらなくても、誰か欲しいかもしれない」というように気軽に出品できるという利点があります。
さらにスマートフォンによる利用を前提として、ユーザーインターフェースを開発し、「いつでも、どこにいても気軽に利用できる」という環境を実現しました。
■DXで得られた成果
「フリマアプリと言えば、メルカリ」と言われるほどの認知度を獲得し、日本初のユニコーン企業(非上場で企業価値10ドル超のテクノロジー企業/21年現在では上場済み)となるまでに至りました。
その後も順調に成長を続け、今やダウンロード数は国内で8000万超、世界全体でいえば1億を超えるダウンロード数を誇る(2021年時点)、国内フリーマーケット市場におけるリーディングカンパニーの一つとなっています。
DXの成功事例②:日本郵便
■DXに取り組んだ背景
日本郵便がDXに取り組むに至った背景には、日本郵便だけに留まらず物流業界全体に蔓延する人材不足という課題が存在しました。
日本は先進国の中でも高い水準で少子高齢化が進んでおり、生産年齢人口も年々減少傾向にあります。
その一方、EC市場の発展に伴い宅配需要は急増しており、その結果として人材不足に陥っているのです。
この物流業界に潜む構造的な人材不足の解決のため、デジタルの活用を取り入れた様々な実験に取り組むに至りました。
■DXの具体的な取り組み内容
まず日本郵便が取り組んだのは、ドローンやロボット技術などの先端技術を用いた輸配送です。
2018年にドローンを使った郵便局間の荷物輸送を試験的に開始し、国内初となる目視外飛行にも成功しています。
2020年には東京都奥多摩町で、ドローンを使った個人宅への配送試験を実施し、配達時間を半分程度に短縮させるという結果を出しました。
その他、自動運転やロボットによる無人配送などの実用に向けた実験にも取り組んでいます。
また同じく2020年に、CBcloud株式会社や株式会社オプティマインドと共同して、AI技術を駆使した配達業務の支援システムを開発し、配達ルートの最適化や荷物管理の効率化を図っています。
■DXで得られた成果
これらの取り組みによって、配達時間の短縮は勿論、配達員の生産性向上も実現しています。
実際、日本郵便の発表によれば、先ほどのAI技術を活用した支援システムによって、
・配達員が配達計画を立てる時間を約60%短縮
・荷物を一つ配達するのにかかる時間を約40%短縮
させることに成功しているとのこと。
日本郵便は今回紹介した取り組みで満足することなく、2030年のビジネス環境を想定し、新たなシステム開発などに取り組み始めているため、更なる価値創造が期待できるでしょう。
DXの成功事例③:コマツ
■DXに取り組んだ背景
コマツのDX推進の歴史は2001年にまで遡ります。
当時建機を用いた盗難事件が相次いでおり、これに頭を悩ませたコマツは建機にGPSを搭載するというアイデアを採用しました。
これにより建機の場所が把握でき、盗難防止に繋げることに成功します。
それだけに留まらず通信機能を搭載し、センサー類と連携させることで、稼働状況や燃料の残量といった情報を把握できるように改良したのです。
これが建設機械に革命をもたらしたとされる「KOMTRAX」です。
さらに時代は進み、いまだにアナログでの業務が多く、人材不足に悩まされる建設現場の課題を解決すべく、コマツは「KOMTRAX」の考え方をさらに発展させていくことになります。
■DXの具体的な取り組み内容
2015年にコマツは、スマートコンストラクションというサービスの提供を開始しました。
スマートコンストラクションとは施工の各プロセスをデジタル化させるサービスです。
例えば
・調査測量⇒ドローンによる3D測量で実施
・施工計画⇒3D施工計画とシミュレーション
・施工・施工管理⇒ICT建機とアプリで3D施工・施工管理
・検査⇒ドローンによる3D出来形検査
といったようにデジタル化しています。
さらにこれらの各プロセスのデータを連携させることで、プロセス全体を最適化させるところまで進化させています。
実際にコマツのスマートコンストラクションを利用した欧米の企業が
・入札から落札までの期間を90日から30日に短縮
・施工計画作成期間を45日から0日に短縮
・本施工の期間を630日から440日に短縮
といった成果を上げたというデータもあります。
■DXで得られた成果
コマツはこれら一連の取り組みによって建設業界だけに留まらず、日本におけるDXの先駆者としての地位を確立しました。
2019年時点でスマートコンストラクションの国内での導入実績は8700件にまで至り、建機の稼働台数は57万台にまで及びます。
その結果として建機メーカーの世界市場において、米国のキャタピラー社に次ぐ2位のポジションを獲得し、日本を代表するグローバル企業にまで成長しています。
まとめ
しかし先端技術を上手くビジネスに組み込まなければならないということから、二の足を踏んでしまう企業も多い事でしょう。
とはいえ今回ご紹介した事例を読まれた方ならお分かりの通り、DXは何も先端技術を活用する取り組みだけを指すわけではありません。
既にある技術やシステムを上手く掛け合わせて、新たな価値提供の仕方を生み出すことも立派なDXと言えるのです。
皆さんもこの記事をきっかけに、DX推進のための一歩を踏み出してください。