人材不足を解消するにあたっては採用や育成、アウトソーシングといった方法がありますが、今回は「育成」という方法にフォーカスしてお話していきたいと思います。
DX人材に必要なスキルセットや、育成する上で重要になる取り組みなどをまとめていますので、是非ご参考ください。
DXを成功させる上で最も重要な要素
既存システムの棚卸は勿論、新たなシステムの開発や導入、それらをマネジメントしていくのは全て「人」だからです。
システムを管理・運営するためのリテラシーを持った人材がいなければ、どんなに優れたシステムやデジタル技術を導入してDXを進めても、宝の持ち腐れになってしまいます。
現在と未来におけるDX人材不足の状況
■DX人材不足の現在の状況
しかしDXを推進できる人材は不足しているのが現状。
実際どれくらい不足しているのか、IPA社会基盤センターのIT人材白書2020にある、2019年におけるIT人材の過不足状況についてのアンケート結果を見てみましょう。
結果は「人材の“量”の過不足」と「人材の“質”の過不足」の二つに分けて公表されています。
人材の量については、「大幅に不足している」と答える企業が33%、「やや不足している」という企業が56%となっています。
対して人材の質は、「大幅に不足している」と答える企業が39.5%、「やや不足している」という企業が51%となっており、人材の量・質ともに約9割の企業が不足しているという結果となっています。
このデータはいわゆるIT系ではない企業の回答ですが、IT企業の回答を見ても9割以上の企業がIT人材の不足を感じていると示しています。
■DX人材不足の未来
既にほとんどの企業が人材不足に悩まされている状況で、このまま何も手を打たずにいるとどうなるのでしょうか。
IT人材白書2019の中で人材過不足状況のアンケートをもとに経済産業省が試算したところ、2019年時点の約26万人不足している状況から、2025年には約36万人、2030年にはなんと45万人不足するというシナリオが記載されていました。
このような状況をふまえると、即戦力を採用するという選択ではなかなか厳しいと言わざるを得ません。
だからこそ、人材を採用して確保するという選択肢ではなく、人材を育成するという選択肢が重要になるのです。
DX人材に必要なスキルセット
ここからは、DX人材育成の指標ともなる必要なスキルを4つご紹介していきます。
■必要なスキル①:ビジネス・サービスをデザインできる能力
まずは新しいビジネスやサービスをデザインできる能力が挙げられます。
優れたデジタル技術を用いたビジネスモデルを生み出し、顧客への提供価値を高めるような新しいサービスを生み出せるスキルは必須と言えます。
デジタル技術も「どう使うか」という目的がないと、その優れた効果や性能を発揮できません。
「とりあえずデジタル技術を導入してみよう」ではなく、「こういう目的があるから、このデジタル技術を導入しよう」という思考がポイントになります。
■必要なスキル②:技術力
続いて必要になるのが技術力でしょう。
DX導入によるビジネスモデルを実現するために、必要なシステムやサービスを実際に作り出す能力は欠かせません。
優れたビジネスモデルやサービスが描けていたとしても、それを具体化して実現させるだけの技術がなければ、絵にかいた餅になってしまいます。
一口に技術と言っても、フロントエンドやバックエンドを実装するプログラミングスキルの他、AIなどを活用したデータサイエンス、クラウド、IoT、セキュリティなど、広範にわたることは言うまでもありません。
■必要なスキル③:部門横断的なコミュニケーション能力
DXは一部門の取り組みにはとどまらず、全社的な取り組みになります。
そのため様々な部門とコミュニケーションを取りながら推進していく必要があるのです。
しかし全社的な取り組みとはいえ、部門によってはDXに対して意欲が低かったり、非協力的だったりする場合もあるでしょう。
そういった状況下で部門ごとの利害やコンフリクトを調整しつつ、一つの目的に向かって協調していく環境を創り上げるのも、DX人材には欠かせない能力であり、役割と言えます。
■必要なスキル④:マネジメント能力
続いて必要になるスキルはマネジメント能力です。
先ほども述べた通りDX推進は全社を巻き込んだ一大プロジェクト。
大きなプロジェクトを推進するには、小さなタスクに振り分けて計画的に実行していかなければなりません。
そのため各タスク工程の管理といったマネジメントスキルも必要になります。
■これらのスキルを一人で持つ必要はない
ここまでDX人材に必要なスキルを述べてきましたが、これら全てを持つ人材を育てようとすれば時間がかかって仕方ありません。
そのため、それぞれのスキルに特化した人材を育成することが重要です。
専門分野に特化したスペシャリストを集めてDX推進チームを作ればいいというわけです。
しかし、最終的にはある程度全ての分野を理解しているジェネラリストも必要になるので、それらをふまえて育成に取り組んでいきましょう。
DX人材育成のメリットとデメリット
■人材育成のメリット
・自社の課題が明確にわかる人材がDXに取り組むことが出来る
DXは、基本的に自社の既存システムやビジネスモデルにおける課題を解決したり、顧客への付加価値を高めたりするために取り組むべきもの。
そのため自社の人材をDX人材へと育成することで、自社の課題をしっかりと踏まえた上でDX推進の計画を立て、推進していくことが出来ます。
・投資に対するリターンを得やすい
人材採用はどれだけ費用をかけたとしても、良い人材が獲得できるとは限りません。
もし採用できたとしても入社後のミスマッチなどで、早期に転職などされてしまえば、元も子もありませんよね。
それに対して社内の人材育成は投資に対してのリターンは得やすいと言えます。
適切な人材に適切な育成投資をすれば、その投資分以上の働きや成果を出してくれるでしょう。
■人材育成のデメリット
・育成にコストと時間がかかる
人材育成に関するデメリットと言えば、育成にかかるコストと時間です。
こればかりはどうしようもありません。
とはいえ先のメリットでも紹介したとおり、育成にかけたコストや時間は必ずDXの成果に結びつく可能性が高くなります。
時間に関しては育成方法などを工夫することである程度の短縮は見込めるとは思いますが、はやる気持ちを抑えて、ある程度腰を据えて取り組む意識が重要でしょう。
DX人材を育成するためのやるべきこと
■失敗を活かせる社内風土作り
DXはこれまでの既定路線から大きく離れたチャレンジとなります。
そのため通常の業務よりも失敗も多く生まれるのは当然。
その時に失敗を咎めるのではなく、失敗したことで「一つの仮説を検証できた」、「これで出来ないということが分かった」という風にポジティブに捉えて活かすという風土があれば、DX人材も安心して学んだことを実践に移すことができます。
■外部研修や書籍購入などの費用負担
DX人材を育成するからには社内研修だけでは難しく、外部研修を受講したり、様々な参考書籍を読んだりすることになります。
これらにかかる費用を社員自身に負担させてしまうとモチベーションの低下に繋がりかねません。
会社側ビジョンのためにDX人材を育成するということなら、会社側で負担してあげましょう。
■適性の見極め
適性のない人材を育成しても、決して思うような効果は得られません。
しっかりと人材の適性を見極めて選抜する必要があるでしょう。
現職能に囚われることなく柔軟な登用をするための人事制度、自他推薦でのキャリアチェンジ制度などを作ることも大事なポイントですね。
まとめ
皆さんも是非採用やアウトソーシングだけではなく、DX人材を育成するという選択を検討してみてください。