「ハードウェア」は物理サーバやネットワーク機器など、「物理的な機械」を指すことは容易に想像がつきますが、「ミドルウェア」となると途端にイメージが湧きにくくなります。
また、「ソフトウェア」とはどう違うのかなど、用語の扱いに戸惑いを感じる方も多いのではないでしょうか。ここでは、ミドルウェアとは何なのか、ソフトウェアとの違いなどを、例を挙げながら解説していきたいと思います。
ミドルウェアとは
特定の機能に特化していますので、どちらかと言えば、ソフトウェアの分類の1の方、アプリケーションソフトウェアに近いイメージになるかと思います。
では、アプリケーションソフトウェアとの違いは何なのでしょう。
ミドルウェアは、アプリケーションソフトウェアがよく利用する機能をパッケージ化して、別のソフトウェアとしてまとめています。それらは、商品として販売されている場合もあれば、OSS(オープンソースソフトウェア)として無償で公開されている場合もあります。
もしミドルウェアがなければ、ミドルウェアが提供している機能をアプリケーションソフトウェアの中の機能として毎回開発をしなければなりません。
ミドルウェアは、高度で専門性が高い機能をパッケージ化してまとめていますので、アプリケーションソフトウェアはミドルウェアの機能を呼び出して使うことで、開発の手間を軽減することができます。
ミドルウェアは、アプリケーションソフトウェアからは完全に独立しており、オペレーティングシステムとアプリケーションソフトウェアの中間ぐらいの立ち位置にあたることから、「ミドルウェア」と呼ばれるようになったのです。
代表的なミドルウェア
Webサーバ
Webサーバとは、クライアントにあたるWebブラウザからのリクエストに応じて、静的コンテンツ(画面や画像)を表示させる働きを持つミドルウェアです。表示させることができるのは「静的コンテンツ」であるというのがポイントです。静的コンテンツは、HTMLファイルで作成されたコンテンツで、文章や画像を貼り付けたページで構成されています。
Webブラウザからのリクエストに対して、単にHTMLファイルを表示させるだけですので、クライアントからの要求内容・ユーザに関わらずいつでも同じ結果を返却します。
Webサーバは、静的コンテンツを表示させる他にも、クライアントからのリクエストに応じて、動的コンテンツを生成する処理を搭載したアプリケーションサーバにリクエストを転送し、結果を受け取ってクライアントに返すという機能もあります。
Webサーバの代表的な製品としては、Apache、Nginxなどがあります。
アプリケーションサーバ
アプリケーションサーバは、Webブラウザからパラメータとともに送られたリクエストに対して、プログラムを呼び出して処理を実行し、パラメータに応じた結果を表示する働きを持ちます。
このように、プログラムを呼び出して処理を実行し、パラメータに応じた結果が表示されるコンテンツのことを「動的コンテンツ」といいます。
静的コンテンツが、単に文章や画像を含むHTMLファイルを表示させるだけであり、誰が見ても結果が変わらないのに対して、動的コンテンツは、リクエストの内容に応じて結果を返却するため、場合によって異なる内容が表示されます。
プログラムを呼び出して処理を実行するというのがポイントで、処理を実行するプログラムは、アプリケーションサーバ上で動作しています。
静的コンテンツを表示させる機能を持つのがWebサーバ、動的コンテンツを表示させる機能を持つのがアプリケーションサーバという位置付けになります。
アプリケーションサーバの代表的な製品としては、Tomcat、Unicornなどがあります。
なお、マイクロソフト社のIIS(Internet Information Services)は、Webサーバとアプリケーションサーバの機能を統合しており、静的コンテンツと動的コンテンツの両方が扱える製品となっています。
データベース(DBMS)
データベースとは、特定の条件に当てはまる「データ」を大量に集めて保管する役割を持ちます。通常、ミドルウェアとしての「データベース」は、データを操作するための様々な機能を搭載したDBMS(DataBase Management System)のことを指している場合がほとんどです。また、オープン系では関係データベースが標準的ですが、関係データベースを扱うDBMSのことをRDBMS(Relational Database Management System)といいます。
DBMSは、データの格納・参照・更新・削除などを行うのに「SQL」と呼ばれるデータベース言語を実行します。
例えば、アプリケーションサーバ上のプログラムからSQLを実行して、DBMSからデータを取り出して結果を表示する、またはDBMSにデータを格納する、などの使い方をします。
代表的なデータベース(DBMS)としては、MySQL、PostgreSQL、Oracle Databaseなどがあります。
ライブラリとの違い
ミドルウェアとライブラリの大きな違いは、ミドルウェアは単独でも動作できるのに対して、ライブラリは単独では動作できず、アプリケーションプログラムの中に組み込んで利用するというということです。
ライブラリがアプリケーションプログラムに含まれる部品として利用されるのに対し、ミドルウェアはアプリケーションプログラムとは対等の立場もしくは土台として動作するイメージになります。
クラウドサービスとミドルウェアの関係
オンプレミス型と呼ばれる従来のシステム構築方式の場合は、自社のデータセンタにサーバを構築し、OSをインストールした上で、ミドルウェアもインストール・セットアップする必要がありました。そこに開発したアプリケーションを搭載して、システムを稼働させるという方式です。
今では、クラウドサービスの台頭により、わざわざ自社にサーバを構築してミドルウェアをインストールしなくとも、ミドルウェアの機能が利用可能です。
クラウドサービスは、大きく分けてIaaS/PaaS/SaaSという種類がありますが、ミドルウェアの機能を提供してくれるサービスはPaaS(Platform as a Service)です。
もちろん、IaaS(Infrastructure as a Service)上のOSに任意のミドルウェアをインストールするということもできますが、PaaSであれば、利用者はインストール作業なくミドルウェアが利用可能です。さらに、OS部分について意識する必要はありませんので、OSの設定やバージョンアップなどの保守作業からは解放されます。
近年の「クラウドファースト」の流れを受け、最初からクラウドでシステム構築を行うことも多くなっています。そのため、PaaSにおいても、どのようなミドルウェアが利用可能なのか、最近のクラウドサービス動向についてはアンテナを張っておいた方が良いでしょう。
ミドルウェアを活用するメリット
インターフェースの標準化
ミドルウェアは、異なるアプリケーションやコンポーネント間の相互運用性を向上させるための標準化されたインタフェースを提供します。これにより、異なるシステムやテクノロジーを組み合わせて使用する際に、シームレスな連携が可能になります。
システムの柔軟性と拡張性の向上
ミドルウェアを使用することで、システムの柔軟性と拡張性が向上します。異なるコンポーネントやサービスを組み合わせることにより、新しい機能の追加や既存の機能の変更が容易になります。
リソースの効率的な活用
ミドルウェアは、リソースの効率的な活用をサポートします。たとえば、データベース接続プールを使用することで、複数のアプリケーションがデータベースへの接続を共有し、リソースの浪費を抑えることができます。
システムのセキュリティの向上
ミドルウェアは、セキュリティ機能や認証・認可の仕組みを提供することがあります。これにより、アプリケーションやシステムのセキュリティを強化し、機密性やデータの保護を向上させることができます。
レスポンス性とパフォーマンスの向上
ミドルウェアは、キャッシング、負荷分散、リクエストの最適化などの機能を提供し、アプリケーションのレスポンス性とパフォーマンスを向上させることができます。これにより、ユーザーエクスペリエンスの向上や処理能力の拡大が可能になります。
おわりに
システム開発やシステム運用を円滑に進めるためにも、導入対象のミドルウェアについての理解を深めるようにしましょう。